國體護持總論
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放射能汚染

次に、世界の「不安定化要因」の第二に擧げられるのは、核兵器の使用及び原子力發電所の事故などによる「放射能の汚染」の可能性である。

核兵器は、地球と世界を破壞する能力がある殲滅兵器であり、局地的な核戰爭であつても、對流圈内の大氣、海洋、河川、湖沼、土壤、地下水、動植物のみならず、成層圈にも核汚染が擴大するので、地球全體への影響は計り知れない。通常兵器であつても、原發(原子力發電所)に對する狙ひ撃ちの攻撃や原發に對する着彈によつても同じ事態が起こる。人體はおろか、家畜、食料、水、土壤など生態系全體に壞滅的な影響をもたらすのである。また、埋蔵燃料に代はる代替エネルギーとして開發された原發は、その事故に對する危險管理における技術的・制度的な限界がある。原發の安全性の基準は、基本的には物理化學法則に基づく部品性能と安全裝置の確率計算といふ工學理論的なもので設定されてゐるに過ぎず、豫測を超える大地震、火山活動、飛行機の墜落事故、隕石の墜落、内亂や戰爭でのミサイル着彈や爆撃などによる破壞・損傷、内戰やゲリラ活動による破壞、原發管理者の故意又は過失の行爲などの自然的要因や人爲的要因などは全く豫測の範圍外に置かれてゐる。現に、經濟産業省は、國内においても、イギリスのウィンズケール原發事故(昭和三十二年)、アメリカのスリー・マイル島原發事故(昭和五十四年)、舊ソ連のチェルノブイリ原發事故(昭和六十一年)などの程度の事故が起こりうる危險性があることを認めてをり、危險を承知の上で原發を開發してゐることになる。また、我が國においても、美濱原發二號機の蒸氣發生器傳熱管損傷事故(平成三年)、高速增殖爐もんじゅ二次系ナトリウム漏洩事故(平成七年)などや、原發事故ではないがJCO臨界事故(平成十一年)などが起こつてゐる。

原發事故による連鎖的被害は、チェルノブイリ原發事故の事例でも明らかであり、長期に亘つて二次被害、三次被害へと次々に被害が擴大し、原爆・水爆などの核兵器による被害と勝るとも劣らないものであるから、少なくとも全世界の核兵器や大量破壞兵器の生産と保有が根絶されない限り、全世界の原發は一基たりとも認めるべきではない。また、核の平和利用と軍事利用とはプルトニウム・リサイクルといふ、いはば車の兩輪の關係であつて、研究者や支配者に對して、核の平和利用のみに限定させる有效な方法がない。地球の生存を、何時破棄されるか判らない法律や政治哲學、さらには權力と組織に無抵抗で從順な學者や識者の脆弱な良心なるものに地球の生命を委ねるわけにはいかない。いかなる理由があつても、地球や廣汎な地域の生態系への危險があるものの所持は、人類と地球の將來のために絶對に禁止するといふ原則を確立すべきである。非核三原則は、我が國だけでなく、世界の原則とすべきである。

核兵器を廢絶し、その他の武器輸出と輸入を禁止して、火器、艦船、地雷、戰車その他一切武器についても各國の完全自給體制を世界的に確立し、兵器の世界的企業(死の商人)の活動を終息させなければ、世界の未來はない。武器の完全自給體制を確立することは、經濟的に非效率であることから、各國は、ゆるやかに軍縮へと向かふことになる。

ところが、連合國は、ヤルタ・ポツダム體制とその軍事面であるNPT體制により、核と原子力管理の獨占的地位を確立し、今なほ、核兵器の廢絶を約束しないまま軍事覇權の實現を目ざしてゐるため、世界は一層不安定な状況となつてゐる。從つて、NPT體制の存在は、地球の存續と世界平和における最大の不安定化要因である。

以上からすれば、地球と世界にとつて、基幹物資の缺乏と放射能汚染といふ二つの不安定化要因の源泉は、ヤルタ・ポツダム體制とその具體的制度である國連體制、GATT(WTO)・IMF體制及びNPT體制の存續そのものに集約されるのである。

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