國體護持總論
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財の種類と分類

通貨が財(goods)の交換手段であれば、財の價値と通貨とは個別的に對應するものである。それがそれぞれの總量として對應するとなると、財が生産された後に使用されて消費され、その價値が減少・消滅するといふ運命も共にすることになる。全ての財の價値に永續性があるのであれば、通貨もまた永續性がある。しかし、財には永續性がない。個別的には存續性に時間的な差異はあつても、永續性がないことは確かである。財の總量において、消費による消滅、使用による減耗(減價償却)、汚損などの減價事由と、新たに財が生産されることなどによる增價事由を考慮して、通貨の總量も增減して決定されることになる。


ここで言ふ財(goods)とは、人間の物質的又は精神的な欲求を滿たす事物のことを指すが、このうち、通貨の使用が必要となる流通豫定の財のことを「流通財」と呼ぶことにする。ただし、流通財は、實體を備へる物質的な實物財と知的財産權及び労務(商品原價としての労働とそれ自體が商品となるサービス)に限られ、一般債權、證券などの金融商品及び金融派生商品などは含まない。

なぜならば、流通財は、後に述べるとほり、通貨發行權に基づいて發行される通貨總量に對應するもので、その範囲が極めて重要になるからである。それゆゑ、流通財から除外される財について、以下にもう少し具體的に檢討してみる必要がある。


財には多くの種類があり、その分類も多樣である。會計學における資産の概念とは類似するも一致はしない。二分法による分類によつても、流通財と非流通財の區別の他に、價値が減耗して減價償却される性質があるか否かによる償却財と非償却財の區別、消費に向けられた性質を有するか否かによる消費財と非消費財の區別もある。また、本稿で述べてゐる「家産」(自給用財産、住宅、生活必需品など)と「非家産」の區別もある。


ここで、重要な點は、家族の財産(家族財産)には、家産とそれ以外の財産(一般家族財産)とがある。そして、家族財産のうちから家産に組み入れて家産としての目的と機能を備へれば家産になり、それ以外の流通財は非家産であることである。つまり、家産となつたものは流通財から非流通財に轉化する。たとへば、食料は、商品として流通するときは非家産(流通財)であるが、家族が取得して消費する段階や、これを將來や危機に備へて備蓄した物は家産(非流通財)と認識されるのである。この區別は、後に述べるとほり、國富本位制の基礎となる國富總量の計算に際して、また、家産の課税免除や優遇税制などの適用に際して必要な區分である。


この家産は、家族の財産であるのが原則であるが、企業にも家産がある。企業とは、經濟活動を行ふ經濟主體(economic unit)のことであり、自家消費を越える商品の生産活動を行ふ組織のことである。組織形態や規模は問はない。事業活動に必要な企業の流通財は、すべて家産となる。

消費活動を主とする經濟主體を家計と呼稱するとすると、家産で生活を營む家族は、自家消費の限度で生産活動を行ひ、不足する商品を取得して消費する經濟主體であるから、家計とは少し異なる。家族は、家計だけでなく生産者としての側面を持つてゐる。生産能力が備はれば、企業としても活動しうる。生産農家などがその例であつて、自家消費を越える農業生産活動を行つてゐるからである。家産を活用して自家消費に必要なものを自家生産して、完全自給ができることになれば、その家族は、流通財の貨幣經濟から完全に卒業できることになる。


財の中には、公共財産や家産などのやうに、流通を豫定してゐないものや流通させることが不可能な非流通財も存在する。このやうなものは、使用價値はあつても交換價値を認識できず、流通に必要な通貨の使用を豫定しない。それゆゑ、理念的には國富に含まれるとしても、通貨取引の對象とならないために、後に述べるとほり、國富本位制の基礎となる國富の總量には含めないことになる。


また、流通財は、現實において常に對價を以て交換されるとは限らない。實際に對価を以て交換されたか否かは問題ではない。ある理由によつて無償贈與された流通財であつても、そもそも交換される可能性があつたものであり、また、それを無償で取得した者がさらに對價を以て交換する可能性もあるからである。つまり、流通する可能性があるものは、流通財なのである。

そして、この流通財にもいろいろな種類があるが、土地や建設假勘定のやうな非償却資産(非償却財)を除けば、すべて償却財である。償却財とは、使用價値があり耐用年數のある流通財が經年變化や、使用による減耗や汚損などによつて減價したり、消費によつて價値が減少又は滅失するものである。これは、會計學及び税法上の減價償却資産(depreciable assets)に類似する概念であるが、全く同じではない。つまり、償却財とは、土地などの非償却財を除いたすべての流通財のことである。


次に、一般債權や金融商品などの廣義の債權についてであるが、これらはそもそも實物財と對應してゐない。債權は、一定の給付を求める權利であるから、實物財の他に、この種の金融商品(financial instrument)や金融派生商品(デリバティブ、derivative financial instruments)までも通貨發行權の基礎となる流通財として認めると、さらにその金融商品を取得する權利、さらにまたその權利を取得する權利といふやうに、際限なく財が生まれることになる。さうすると、一個の實物に對して、二重三重と次々に無限級數的に擴大して多重的に名目上の價値が重複加算されることになる。

また、債權は、常に債務と對向するものであつて、國家を全體として觀察する會計學的な認識では内部取引(internal transaction)に過ぎず、假に、流通財と認識しても、債務といふ負の財と正の財である流通財が相殺されてしまふものであつて、流通財として認識できない。


また、労務についてであるが、これには、商品などの製造原價となる労働と、商品それ自體であるサービスとがある。労務は、原則として提供と同時に消滅する性質のものである。しかし、個別的に見れば、會計學上の繰延資産(deferred assets)や前拂費用(prepaid expenses)と認識できるものもある。

さらに、人の労働やサービスは、將來に亘つて繼續して供給されるために國家が永續するものであることからして、永續的な労務の總體を基本權として、資産として計上することも可能である。しかし、それは永續性を前提とすれば無限大の價値があることになり、その通貨總量もまた無限大となつてしまふので、計上するには不適格である。そこで、年度末において、次期に提供されうる労務一年分の總量を棚卸資産(inventories)として計上することになる。これは、永續する無限大の労務の總量(基本權)の一部である支分權として認識することができるからである。それゆゑ、労務價値の年度毎の總額は、通貨發行權の基礎となる流通財として認識することになるのである。

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