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基軸と運動(こころとそぶり)の臣民度テスト

祖国再生のための運動をしてゐると自称する者が、何かしらの「みのそぶり」(発言と運動)をすることがあつても、その基軸となる「こゝろのおきて」(心構へ)が何なのかが全く判らない者が余りにも多い。そこで、ここでは、一人でもできる自己診断表(マーク・シート)といふか、臣民度テストを示してみたい。

そもそも、祖国再生と言つても、その捉へ方が一様でない。その理由は、戦後の状況が、大東亜戦争敗戦後の連合国体制の東西冷戦構造といふ二つの複合的な世界構造によつて、様々な問題状況が生まれてしまつたが、東西冷戦構造が局地的には崩壊したが、東西冷戦構造によつて封印されてきた宗教問題と民族問題などが火を噴くこととなり、さらに一層複雑な世界構造が生まれてゐるからである。

思ひつくままに、国内問題だけに限つて順不同でキーワードを列挙するとすれば、天皇と皇室、占領憲法、占領典範、閣僚の靖国参拝、移民受入、在留資格、帰化要件、国籍要件、外国人地方参政権、謝罪決議、村山談話、河野談話、教科書問題、拉致問題、民族教育、裁判員制度、地方分権、消費者保護、食料自給、金融ビッグバン、金融保険制度、労働者派遣、派遣業、解雇制度、終身雇用制、年功序列賃金、能力給制、老人福祉、介護制度、保険制度、年金制度、児童相談所の権限、暴対法、国防、自衛隊、男女共同参画社会、人権擁護法案、分業化、核家族、税制、日教組・全教、一神教、祭祀、理性論(合理主義)、社会契約説、ルソー主義、個人主義、現代人権論、天皇主権、国民主権、象徴天皇制(傀儡天皇制)、君が代、日の丸、元号、皇紀、西暦、太陰太陽暦、グリゴリオ暦、数へ年、満年齢、正統仮名遣ひと占領仮名遣ひ、文化、伝統、國體など枚挙に暇がないが、これらを否定、制限、縮小、消滅の方向を目指すか(マイナス方向)か、肯定、緩和、拡大、拡散の方向を目指すか(プラス方向)か、あるいは現状維持か、といふことについて、一つづつ判断したとしても、その判断基準が何なのかについて明確な基準を示さなければ回答に到達できないのである。

そこで、本来であれば、伝統保守とは何か、といふ明確な基準を示して、これらのキーワードについて判断しなければならないのに、誰もその基準を示すことができないのである。それでは、基軸(こゝろ)が定まらないことになり、当然に運動(そぶり)が美しくなるはずがない。

前書きはこの程度にして、では、その明確な基軸を示すことにする。それは、四つある。実質はこれらは統合的に一つであるが、便宜的に四つに分解して示すことにする。

第一の基軸は、「本能論」である。これの対極にあるのが「理性論(合理主義)」である。第二の基軸は、「家族主義」である。これの対極にあるのが「個人主義」である。第三の基軸は、「祭祀」である。これの対極にあるのが「宗教」である。そして、第四の基軸は、「國體論」である。これの対極にあるのが「主権論」である。

この「本能」、「家族」、「祭祀」、「國體」の四つは、國體の雛形として統合的に一つとなるものであつて、國體とは、國家の本能であると定義される。これらの説明は、拙著『國體護持總論』(近刊)の第一巻(くにからのみち)と第六巻(まほらまと)に詳しく述べてゐるので、ここでは長くなるので省略するが、この四つをすべて肯定することを基軸とする者が「真正保守」であり、これらを全て否定し、さらに、その対極となる「理性」、「個人」、「宗教」、「主権」を肯定するのか「真正売国奴」といふことになる。

そして、真正保守の基軸となる四つ(本能、家族、祭祀、國體)のうち、一つないし三つしか肯定できない部類に該当するのが「保守風味」の反日思想といふことになる。もし、真正保守であれば、例外なく真正護憲論(新無効論)となる。これには一つの例外もない。それゆゑ、占領憲法を憲法として有効であるとする者は、真正保守の必須とされる四つの基軸のいづれか一つ以上が欠落してゐる者であり、これにも一つの例外はない。だからこそ「保守風味の反日」なのである。これらの者は、自分が反日であることを自覚し、あるいはその予感を抱いてゐる者たちである。そのために、必死になつて、我こそが保守であつて、それを批判する真正保守の言動を論理性のない口汚い中傷をまき散らして狼狽へながら批判するのである。だから、このやうな者が一番始末に負へないのである。



そのむかし、「左翼小児病」といふ言葉があつた。これは、レーニンが大正九年に「共産主義における左翼小児病」といふ著作をパンフレットで発行したときに登場したものである。これは、現実的でない過激で無思慮な言動のことで、現実の情勢を充分に理解できず、原理主義的な公式論で判断して行動する労働運動や革命運動を批判した言葉である。「極左冒険主義」とも呼ばれる革命的急進主義であり、共産主義思想の未熟さゆゑに発生する偏向として批判された。

この言葉は、日本共産党が、昭和二十五年一月の、いはゆる「五十年問題」によつてコミンフォルムの武装革命方針へと転換して、その後は軍事闘争を開始し、火炎ビン、拳銃、日本刀、ダイナマイトなどを使用した武裝蜂起の事件を數年に亘つて繰り返すに至つた武装闘争や、連合赤軍による昭和四十七年二月の浅間山荘事件などに象徴されるやうな武装闘争などに対して批判的に用ゐられたことはあつたが、それ以来、我が国では死語となつてゐた。

ところが、平成十四年九月十七日、小泉純一郎首相が北朝鮮を訪問して行はれた日朝首脳会談の席で、金正日が、「拉致は部下が勝手にやつたことだ」として、北朝鮮が日本人十三人を拉致したことを認めて口頭で謝罪し、すでに拉致実行組織を解体し、拉致を指揮した者を処分したと伝へた際、金正日自身の責任回避を試みるために、その犯人については、「一部の英雄主義者、冒険主義者」であるとしたが、ここに左翼小児病を意味する「英雄主義者、冒険主義者」といふ言葉が亡霊の如く再び登場したのである。尤も、北朝鮮の左翼小児病による拉致は、一部の者によるものではなく、国家的組織犯罪である。金正日の指示なくして拉致はできないのが北朝鮮の国家体質であり、拉致の主犯である辛光洙(シン・グァンス)を北朝鮮が英雄として特別待遇してゐることがその証左である。

そして、平成二十一年九月十六日に成立した鳩山内閣に、辛光洙を含む「在日韓国人政治犯の釈放に関する要望書」を平成元年に韓国の当時の大統領盧泰愚に提出したことのある千葉景子と菅直人とが入閣した。千葉景子が法務大臣となり、菅直人が副総理兼国家戦略局担当大臣となつたことからすると、鳩山内閣は、左翼小児病を支持する「拉致容認内閣」と云つても過言ではない。

このやうに、左翼小児病といふ死語は、北朝鮮の拉致事件において亡霊の如く甦つたのであるが、これと対峙して指弾すべき我が国の内閣が、なんとその応援団となつてしまつたのは誠に嘆かはしい限りである。しかし、これは決して意外なことではない。GHQの占領政策によつて染みついた病巣から溢れ出した重度の亡国的症状に他ならないからである。その病巣とは何か。それは、やはり、占領憲法と占領典範である。



この左翼小児病の勢力に対して、保守風味の反日勢力は批判を強めてはゐるが、その保守風味の反日勢力は、口では「尊皇」を唱へながら、象徴天皇制などと浮かれて占領憲法と占領典範を賞賛したり、これらを有効であるとして僅かながらの改正を主張する改憲論者であつて、GHQの洗腦が未だに解かれない付和雷同のお調子者であり、無自覚な売国奴に過ぎない。といふよりも、これらの者は、明らかに売国的な病気に犯されてゐる。その病名は、「右翼認知症」といふ。

この右翼認知症の患者たちに共通するのは、記憶力、記銘力、思考力、判断力などに著しい障害があることである。占領時代に起こつた事実とその恥辱を忘れ、経済的に豊かであることが幸福であると思ひ込み、民族としての志を失ふことを屈辱と感じないのである。具体的に云ふと、次の十一項目の症状のうち、該当すればするほどその症状は重症である。



① 歴史についての蘊蓄を自慢げに語り、特に、東京裁判史観に対する憤りを抱き、近現代史の歴史的事実に関してのみ異常なまでの知的好奇心を持つてゐる。

② GHQ占領期に起こつた事実を知識としてはある程度持つてゐるが、それに対する強い憤りがなく、この時代のことは仕方がなかつたことと諦めてゐる。

③ GHQ占領期の事実について愚痴をこぼし、戦後レジームからの脱却などと勇ましく騒き、占領憲法に対して散々ケチをつけるにもかかはらず、占領憲法と占領典範は有効であり、改憲論しか主張しない。

④ 戦後体制を批判するたけで、将来において祖国がどうあるべきかについての何ら具体的な理念や方策が判らないので示せない。

⑤ 占領憲法第九条を改正さへすれば祖国が再生できると信じてゐる。軍事防衛だけで祖国防衛ができると信じてゐる。

⑥ 占領憲法の改正が、自分たちの願つてゐない方向になることの危険性を感じてゐない。

⑦ 占領憲法の象徴天皇制と国民主権は正しく、かつ、すばらしいので、これらは守るべきものであると信じてゐる。

⑧ 占領典範が皇室弾圧法であることに気づいてゐない。

⑨ 帝國憲法護憲論(真正護憲論、新無効論)が正しいとは知りながら、これまで改正論の運動や人脈を維持してきたことから、その腐れ縁が断ち切れずに、ダラダラと改正論を主張して運動してゐる。

⑩ 改正論が真正売国奴の見解であることに気づいてゐない。

⑪ スローガンとして國體護持を叫びながら、國體の意味も内容も知らないし全く説明できない。



いかがてあらうか。以上の十一項目のうち、三つ以上に該当すると右翼認知症であると診断できる。その場合は、基軸(こゝろ)を正しく治すまで運動(そぶり)を自重される必要があるので、その自己診断結果と自覚症状をよく参考にして自己を見つめ直していただきたいものである。

平成21年11月23日記す 南出喜久治

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