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連載:千座の置き戸(ちくらのおきど)【続・祭祀の道】編

第五十八回 米定憲法

とつくにの ちぎりをのりと みまがひて まつりごつやみ はらひしたまへ
(外国の契り(条約)を法(憲法)と見紛ひて政治する闇祓ひし給へ)
とつくにの をしへをかさに きるきつね くすねたかさは やぶれすねがさ
(外つ国の教へ(占領憲法)を笠に着る狐(憲法業者)くすねた笠は破れ拗ね笠)


去る8月15日にペンシルベニア州で行はれたアメリカ民主党の大統領候補ヒラリー・クリントンのキャンペーンに合流して演説をした副大統領バイデンは、共和党の大統領候補ドナルド・トランプが日本の核武装を容認した発言に対して次のやうに批判した。


「Does he not realize we wrote the Japanese constitution so they could not own a nuclear weapon? Where was he in school? Someone who lacks this judgement cannot be trusted.(核武装を持てないやうに我々(米国)が日本の憲法を書いたことを、彼(トランプ)は知らないのではないか。彼は学校で習はなかつたのか。トランプは判断力に欠けてをり、信用できない。)」


この発言については、日本のメディアも「日本の憲法は我々(米国)が書いた」として取り上げられた。つまり、日本国憲法(占領憲法)は米国が起草したことを明言したのであり、このことは周知の事実であるといふのである。


これと同じやうな発言は以前にもあつた。たとへば、駐日大使である「キャロライン・ケネディ大使」が平成26年3月8日の「国際女性デー」に、自己の日本語アカウントに、「ベアテ・シロタ・ゴードン - 日本国憲法に女性の権利を書き込みました。」( #womensmonth http://goo.gl/3fjvG)とツイートしたことがあつたのである。

しかし、ベアテ・シロタ・ゴードンは、家族の解体によつて個人主義を徹底させることによつて革命が成功すると考へた、ロシア革命におけるレーニンの懐刀である女性革命家コロンタイに匹敵する思想を持つた人物である。しかし、親の七光りで何も知らないキャロラインは、「国際女性デー」だからといふ短絡思考の軽い乗りでベアテ・シロタ・ゴードンを何となく持ち上げたのであらうが、この言葉は、我が国を著しく侮辱したことになることに意を介さないものであり、駐日大使としては不適格者であることを暴露してしまつたのである。


そして、「日本国憲法に女性の権利を書き込みました。」といふキャロラインの言葉以上に、今回の副大統領バイデンの言葉は重い。しかし、このやうな認識がアメリカの常識なのである。キャロラインやバイデンだけでなく、このやうな発言が繰り返されるのは、アメリカではそのことを「学校で習つてゐる」一般常識だからである。


占領下におけるプレスコードには、「SCAP(連合軍最高司令官)が憲法を起草したことに對する批判(日本の新憲法起草に當つてSCAPが果した役割についての一切の言及、あるいは憲法起草に當つてSCAPが果した役割に對する一切の批判。)」があり、日本のメディアが占領憲法を起草したことを報道することなどは一切禁止されてゐた。

アメリカでは、今ではこのことは公知の事実になつてゐるが、未だに我が国では公表すること自体がタブーとなつてゐる。未だにプレスコードは生きてゐるのである。


占領の言論統制(検閲)の方法として、発表直前に検閲して、不都合な部分を墨塗りするなどして削除するといふ事前検閲があるが、これでは検閲された事実があつたことがばれてしまふ。戦前の日本や占領期当初の教科書の場合がこれである。

しかし、検閲したことがばれないやうにするためには、プレスコードとして禁止事項を規定し、これに反した場合は、その後における出版社の業務停止や解散命令などの制裁を科すといふやうな事後検閲の方法がある。


事前検閲の方が規制の程度が強いやうに錯覚されることが多いが、実は、事後検閲の方が規制の程度と効果は格段に強い。禁止事項は抽象的で、どのやうな表現が禁止事項に該当するのかが判断できないことがある。さうすると、事後に制裁を受けるか否かが明確でないために、できるかぎり問題のない表現にしたり、そもそもそのやうな事項の報道を避けるといふ自主規制(自己検閲)を行ふやうになる。業務停止や解散命令を受けると、その損害は致命的なので、そのやうな冒険は一切しないことになる。実質的に検閲の事項とその範囲が拡大するのである。


そのための方法として、GHQは、占領下で「日本新聞協会」といふ自主検閲組織を作らせて、これに紙媒体であると電波媒体であるとを問はず全てのメディアを加入させた。これが独立後の今も存続してゐるのである。


そのために、これまでプレスコードに従つて自主検閲して、占領期から現在まで正しい報道をしてこなかつたことを認めて国民に謝罪し、これまでの歪んだ報道の歴史検証をしなければならないが、さうすると、これまで自主検閲を行つてきた「日本新聞協会」を解散させなければならなくなる。しかし、そこまでして国民に真実を告白して歴史検証をすると、メディアに対する国民から信頼を確実に失ひ、購読者や視聴者を激減させてしまふ。それは、朝日新聞の慰安婦捏造報道の告白とは到底比べものにならない異常事態となつて、多くの新聞社やテレビ局の経営が成り立たなくなるのである。


それゆゑ、その虚名と利権をなんとか維持したいために国民を騙し続けてゐるのが、我が国のメディア界の姿なのである。


占領憲法は、欽定憲法でも民定憲法でもない。言ふなれば「米定憲法」であると、随分以前に西部邁氏が言つたことがあるが、今回のバイデン副大統領の発言は、占領憲法がまさにこの「米定憲法」であることを告白したことになる。


しかし、「米定憲法」といふ表現は、政治学的には肯定できても、憲法学、国法学からすると、占領憲法は、「協定憲法」や「条約憲法」に近い概念ではあるとしても、「憲法」ではない。帝国憲法第76条第1項に基づいて、講和条約としての限度で効力が認められるものではあるが、少なくとも民定憲法(国民主権による憲法)でないとする点では正しい認識と言へる。


ところが、これを憲法であると洗脳され、自らもそれを信じ込むことに無類の快感と快楽すら覚える占領憲法真理教の信者達によつて、占領憲法は「平和憲法」などと褒め称へられてきたが、そのやうな信者達の思考回路をバイデンは正確に見透かしてゐて、米国が作つてやつた憲法を大事に守れと公言し、我が国を属国として見下し公然とバカしてゐるのである。


占領憲法を憲法として認める占領憲法真理教の信者達が、バイデンの言葉を聞き、占領憲法は米定憲法であると認識しながらも、それでも占領憲法は我が国が守るべき憲法であると信じてゐるとすれば、それは「自虐的」といふよりも著しく「嗜虐的」である。


このことに関連して、産経新聞(平成28年8月18日)によれば、「民進・岡田克也代表『米国が書いた憲法とは、不適切な発言だ』 バイデン米副大統領を批判」といふ表題で、民進党の岡田克也代表が18日午後、東京・永田町の民進党本部において行つた発言に関する記事があつたが、これこそ「米定憲法」についての嗜虐的な人物の平均的な認識と言へる。


それは、

「民進党の岡田克也代表は18日の記者会見で、バイデン米副大統領が「(日本が)核保有国になり得ないとする日本国憲法を私たちが書いた」と発言したことを批判した。岡田氏は「核兵器を持つべきではない」と断った上で、「最終的には(日本の)国会でも議論して(現行憲法を)作った。米国が書いたというのは、副大統領としてはかなり不適切な発言だ」と述べた。」
「岡田氏は現行憲法に核兵器の保有を明確に禁止する条文はないと指摘し、バイデン氏の発言について「ご自身が憲法の条文まで踏まえて発言したものではないのではないか」と疑問を呈した。同時に「(GHQが)草案を書いたかどうかというよりは70年間、日本国憲法を国民が育んできた事実のほうがずっと重要なことだ」と強調した。」

といふものであつた。


ここで岡田氏は、「最終的には(日本の)国会でも議論して(現行憲法を)作った。」とするが、「最終的には」とか、「国会でも議論して」とか、「(GHQが)草案を書いたかどうかというよりは 」とすることは、やはり米国が起草したことを認めてゐるのである。そして、起草後にどういふ推移で公布、施行に至つたのかについての具体的な歴史的事実を知れば、米国が占領憲法を作つたとするのは明らかなのであるから、「米国が書いたというのは、副大統領としてはかなり不適切な発言だ 」とすることの方こそ、「不適切な発言」なのである。


占領憲法の成立過程について、学校では習はなかつたためなのか、本当に無知であり不見識も甚だしい。政治家としての資質は全くないと言へる。


「70年間、日本国憲法を国民が育んできた事実のほうがずっと重要なことだ 」ではなく、「70年間、日本国憲法について国民が騙され続けてきた事実のほうがずつと異常なことだ」と認識できない政治家は、岡田氏のみならず与野党を問はず、速やかに退場すべきである。


バイデンの発言がどのやうな思惑でなされたのかを細かく詮索する必要はない。どうせ日本核武装の流れを阻止し、トランプを排除してクリントンを大統領とするためのダシとして日本のことについて発言したのであらう。

しかし、このことによつて、一皮ずつ剥がれるやうに、GHQ占領政策の実態を顕現させ、戦後最大のタブーである「占領憲法の無効性」を政治的にも表明しうる時代に突入してきたことだけは間違ひないのである。


いまや占領憲法の護憲論と改憲論は、感じが悪い、歯切れの悪い存在となつた。そのうちに、日本新聞協会とともに、歴史の厳粛な審判を受けて断罪され、「国賊認定」されることであらう。

南出喜久治(平成28年9月1日記す)


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