自立再生政策提言

トップページ > 自立再生論02目次 > R04.05.15 第百九十六回 日露講和条約

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連載:千座の置き戸(ちくらのおきど)【続・祭祀の道】編

第百九十六回 日露講和条約

いくさにも うまれおくれて しにおくれ などてうきよに おごりねがはむ
(大東亜戦争にも生まれ遅れて死に後れなどて憂き世に奢侈願はむ)


令和4年5月8日、江東公会堂で「日本外交中立要求国民大会」が開かれた。

この議題を臨機応変に捌く司会者として適任者が見つからないのはやむを得ないことであり、主催者の1人である私が司会をすることになつた。

1か月前の「千座の置き戸」第194回「交戦権」で述べたとほり、今回のロシア・ウクライナ紛争では、局外中立を保つことがわが国の国益であり、それ以外の選択肢はないのである。


セルギー・コルスンスキー駐日ウクライナ特命全権大使は、令和4年3月28日付け公開質問状に対して回答をせず完全に無視してきた。同年4月5日にも再度公開質問状を送つても、その発言を撤回して謝罪もしない。田中健之氏をレイシストとする侮辱行為、名誉毀損行為を行ひ、同氏に対して危害を加へることを呼びかける脅迫行為まで行つたセルギー・コルスンスキーは、我が国内において、1人の臣民を狙ひ撃ちにして、公然と犯罪行為を行ふ者であつて、偽善者の仮面を被るペルソナ・ノン・グラータ(Persona non grata)であり、国外退去を命ずるべき人物である。


それゆゑ、同氏以外の大使館員の参加を求めて招請したが、これも完全に無視された。

また、メディアに露出してゐる在日ウクライナ人にも知り合ひが居たので、彼らにも個人的に招請したが、國體護持塾のHPを見て尻込みしたなどと意味不明の弁解をして参加を断つてきた。


本来であれば、ウクライナは、わが国は中立ではなく積極的にウクライナ支援をお願ひしたいとして、この集会に参加してそのことを求めるべき立場にあり、紛争における様々な事情を説明する必要があつた筈であるから、集会には是非とも参加してもらひたかつた。

ロシア側にも招請してゐるので、双方の参加があれば、双方に平等に発言の機会を与へることを保証したが、それでも拒絶されたのである。

我々の質問に耐えられないと判断した以外に理由は考へられない。


また、これも國體護持塾のHPで公開してゐるが、首相官邸や全国の国政政党本部、それに何人かの政治家に、令和4年4月20日付け公開質問状を送つたが、回答期限として指定した5月6日までにどこからも回答がなかつた。結果的には無視されたといふことかも知れないが、余裕のある無視ではなく、恐怖による無視であらう。つまり、答へられない腰抜け共だつたのである。


さて、この集会の内容については、ネット上で公開されてゐるので参考にしていただくとして、私は、司会者の立場を超えて、実質的な基調講演を行つた。

それは、「侵略」と「交戦権」といふ2つの概念を明確にしなければ、局外中立を守るべきとする論理の正当性を示すことができず、議論がかみ合はないからである。


交戦権については、第194回「交戦権」で述べたとほりであるが、これについては少し補足したい。


交戦権に関しては、わが国では、みんな寄つて集つて嘘をついてゐる。自衛隊は違憲だとする共産党は、いざとなつたら(有事には)自衛隊を出動させて防衛するといふ。違憲の実力組織を有事の緊急事態においては、超法規的措置として「合法」と認めるといふのである。


これは、昔、日本社会党が主張した違憲合法論の変形である。違憲であるが、平時においても合法だとする日本社会党とは異なつて、共産党は、有事の場合に合法だとするご都合主義であり、立憲主義の根幹を否定する反立憲政党となつた。いな、革命といふ反立憲行為を行ふことを目的とする政党であるから、いま初めて反立憲政党になつたのではない。共産党の矛盾が露呈し、ここまで落ちぶれてしまつたのである。これを言ひ出した日本社会党が長期低落傾向になつたのと同じ運命を辿ることは必至である。


ともあれ、自衛隊には交戦権がない。国に交戦権が認められないのであるから、国の機関である自衛隊に交戦権がないのは当然のことではないのか。自衛隊で自衛戦争をすることはできないと占領憲法は謳つてゐる。

ところが、これが出来るとするのが、共産党を含む全政党の考へである。その理由は、自衛権があるからだと言ふ。

しかし、自衛権を否定したのが占領憲法なのである。GHQが完全軍事占領をしてゐるので、自衛権を与へることは有害なのである。自衛権を持たせると、GHQを排除する権利を認めることになる。そんなことをGHQが認める筈がない。だから自衛権はないのである。自然権としての自衛権ですら否定したのが占領憲法なのである。


仮に、自衛権があつたとしても、自衛隊は軍隊なので、軍隊が自衛権を行使することを自衛戦争といふのであるから、自衛戦争は交戦権の行使である。詭弁を弄して、自衛隊は軍隊でないと弁解したとしても、国家の実力組織として外国勢力と戦闘することが交戦権の行使なのである。どう言ひ訳しても交戦権の行使は占領憲法違反になる。


「赤信号、みんなで渡れば怖くない」のである。といふよりも、「赤信号、みんなで渡れば青にする」である。挙つて反立憲政党、憲法破壊政党である。こんな政党しかわが国に存在しないことがわが国の最大の不幸と言へる。


そもそも、占領憲法は、我が軍の「無条件降伏」と「武装解除」を求めたポツダム宣言を受け継いだものである。「無条件降伏」は、戦はずして降伏することなので、「戦争放棄」であり「交戦権不行使」である。そして、「武装解除」は、「戦力不保持」である。

「戦争放棄」と言へば、尤もらしく聞こえるが、実際は「安全放棄」、「防衛放棄」にすぎないのである。


さて、次は、「侵略」の概念である。


昭和3年のパリ不戦条約、昭和20年の戦勝国連合憲章(俗に、国連憲章)及び昭和49年の国連決議(侵略の概念に関する国連決議)において、「侵略」の概念が登場するが、いづれの定義も明確ではない。実は、侵略とは、aggressionの訳語であるが、これは反天皇主義の横田喜三郎の誤訳であり、これが略奪などを含む概念として誤解されてしまつた。しかし、このaggressionの意味は、「不意打ち」と訳するのが本来である。何らの紛争がなかつたにもかかはらず、突然に侵攻されたといふことである。

そして、我が政府も、平成25年に、この侵略の概念は、統一的な見解といふものが最終的に決まつてゐないとしてゐた。にもかかはらず、ロシアの今回のウクライナに対する特別軍事作戦を、イラク戦争と同様に無批判にてアメリカに追従して、「侵略」と断定したが、これはご都合主義も甚だしいものがある。


平成26年、ウクライナのヤヌコーヴィチ大統領が、アメリカのバイデン(オバマ政権の副大統領)のファミリー利権を追求する目的で主導したマイダン革命と呼ばれる非合法のクーデターによつて崩壊し、それ以後、権力を掌握したアメリカのネオコンが飼ひ慣らしたネオナチによる傀儡政権がウクライナ政府を支配し、東ウクライナのドンバス地方のロシア人の大虐殺を始めた。これは、これまで認められてきた事実であり、バイデンの利権については、オバマを認めてゐる公知の事実なのである。そして、この大虐殺に抗した内紛が8年も続いた結果、ついに、ドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国とが令和4年2月21日に独立を宣言し、これをロシアが承認して友好相互援助条約を締結して、3日後の同月24日に両国の防衛のために特別軍事作戦を開始したのであつて、これは決して不意打ちではない。これは、満州事変と同様に、これが紛争の原因となつたのではなく、紛争の結果として起こつたといふことである。


欧州での東西冷戦構造が崩壊し、平成2年2月9日、旧ソ連のゴルバチョフ書記長とアメリカのベーカー国務長官との間で、NATO軍は、東方へ支配領域を「1インチ」も拡大させないとの「1インチ合意」をしたので、翌年ワルシャワ条約機構は解体されたが、これを見透かして、NATOは1インチ合意を反故にして東方へと拡大させた。そして、ウクライナは、平成27年のミンスク合意も反故にした結果、今回の事態となつたのである。


このやうな事態において、あへて占領憲法で禁止する交戦権を行使してまで、敵性国家のウクライナを支援する理由がどこにあるのか。それがわが国の国益を害することにならないのかについて素朴な疑問が生まれるのは当然のことである。


インドは、ウクライナに対する兵站行為を行ふ自衛隊機の入国を拒否した。インドは、わが国が国際的、国内的に違憲違法な行動をすることに対して警鐘を鳴らしてくれてゐるのである。


わが国がこのまま対米従属路線を突つ走ることは、国益と国防の危機を招くのであつて、これ以上の火遊びをしてはならない。戦へないオモチャの兵隊のコスプレ組織の自衛隊では、わが国は守れない。せめて、対米自立の第一歩を踏み出すために、今回の事態については局外中立を保つことが必要となる。


そして、単に中立を守るといふ消極的、現状維持の外交方針を主張するだけならば誰でも出来る。しかし、その先においては、日米露の3国関係の再構築をしなければならない。


それは、ソルジェニーツィンの生き様に学ぶべきである。

ソルジェニーツィンは、旧ソ連時代における弾圧に屈することなく抵抗し続けたロシアの開国者である。ソ連が崩壊して共和制国家となつたロシアに帰国しても、旧ソ連の過去の悪行を批判し続け、北方領土を日本に返還せよと主張した。愛国者は、他国の愛国者の心を理解できるのである。

北方領土返還は、日本の「失地回復」の実現である。

ヤルタ密約でスターリンを唆し、北海道の北半分まで侵奪しようとさせたアメリカが、さらにダレスの恫喝で領土返還交渉を翻弄された、現在の2島返還、4島返還といふチマチマとした問題ではない。

全千島、南樺太の失地回復。これこそがわが国の失地回復なのである。

ソルジェニーツィンは、わが国の失地回復を正当であると主張した。それであれば、これに応へて、ロシアの正当な失地回復を我々は承認する必要がある。


それは、ロシアがウクライナと一体的に保有してきたロシアの権益の正当性を認めて、その失地回復を承認することである。


そして、日露間において、相互に失地回復承認の協定を含む講和条約を締結することを目指すべきなのである。


交戦権がないといふことは、講和権限もないため、占領憲法では講和条約は締結できない。これは、帝國憲法第13条によつて可能なのである。つまり、これにより帝國憲法が現存して居ることが証明される。


このやうにして、局外中立を維持し、日米露の三国関係の調整がこれからの日本外交の課題である。しかし、既成政党ではこれは出来ない。

この課題の実現を目指すのは、祖国再生同盟しかない。


ソルジェニーツィンは、確か、『収容所群島』といふ作品の中で、


「権力は、その力を高めるために、自らを偽装するのである。」


と述べた。


権力は、情報を隠蔽し、捏造し、操作して、大衆を洗脳する。ソルジェニーツィンが見た権力はソ連であつたが、いまや権力の実相は、国境を越え、世界全体を取り込む国際金融資本とこれに操られる多くの国家政府である。

その権力は、ウイルスといふ生物兵器、ワクチンといふ生物兵器の実態を隠し、今又、ウクライナ問題の実相をも捏造して、ありとあらゆる「偽装」をして世界の人々を洗脳して支配しやうとしてゐる。

我々は、これを徹底的に暴露し、覚醒し対抗して戦ひ続けなければ、祖国を防衛し再生させることはできないのである。


南出喜久治(令和4年5月15日記す)


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