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連載:千座の置き戸(ちくらのおきど)【続・祭祀の道】編

第百八十一回 反ワクチン・反マスク訴訟 その三

くすりには くすしちからを そなへども いまはさはりの ものとまがへり
(薬には奇し力を備へども今(現代)は障りの物(毒物)と紛へり)


前回予告したとほり、令和3年10月12日(火)午後1時30分に東京地方裁判所第703号法廷で第1回口頭弁論が開かれました。


この日は、反ワクチン訴訟の主任の訴訟代理人である木原功仁哉弁護士が、冒頭で意見陳述することになつてをり、この訴訟を中心とした政治運動の広がりの中で、木原弁護士が来たる10月19日告示、31日投開票の衆議院総選挙に、兵庫県第1区(神戸市東灘区、灘区、中央区)から無所属で立候補することも盛り込んだ内容の意見陳述書を朗読することになつてゐました。


ところが、兵庫県選挙管理委員会は、衆議院総選挙の立候補予定者向けの説明会をこの訴訟の裁判の日と同じ日に指定してきました。これは候補者の木原弁護士が参加すべきですが、この意見陳述は、木原弁護士が行ふことを裁判所が許可したことから、変更が許されませんし、立候補宣言は私が代読する性質のものではありませんし、木原弁護士自身が行ふからこそ意義があるからです。


それで、仕方なく急遽、木原選対の秘密保持のために、私は、この訴訟の期日については木原弁護士に一切を委ねて、逆に私が木原弁護士の代理人として選挙説明会に出席することになりました。


ところが、その前日の午前10時40分ころに、東京地裁民事2部の横井靖世裁判官から電話があり、12日のことで話があるとのことでしたので、午後に電話をしたところ、すでに10月5日に木原弁護士が作成して裁判所に提出してゐた意見陳述書のうち、木原弁護士が衆議院議員総選挙に立候補することを記述した部分を削除して陳述してほしいと言つてきました。


裁判所は、これは選挙の事前運動の疑ひがあると言ひましたが、これは事前運動ではないことが明らかであり、私はその説明をしました。これは選挙運動、つまり投票を求める行為ではなく、立候補することの声明に過ぎません。これが許されないのであれば、立候補予定者が立候補を声明したことをメディアが報道することも事前運動に加担したことになつてしまふからです。


私がその説明をすると、裁判所は納得したのですが、今度は、立候補と本件訴訟とは関係がないからだと話をすり替へてきました。

しかし、もし、原告訴訟代理人の木原弁護士が衆議院総選挙に立候補をすることが本件訴訟とは関係がないといふのであれば、意見陳述書には、ワクチンを中止するか否かが全く争点となつてゐない自民党総裁選のことや、その候補者に対して公開質問状を出し、野田聖子がワクチン禍として不妊の危険がないとは言ひ切らなかつたことなども書いてゐましたが、このやうなことは、木原弁護士の立候補以上に本件訴訟とは全く関係がないことになります。

ところが、裁判所は、自民党総裁選などの記述の削除は求めずに、木原弁護士の立候補声明のことだけを狙ひ撃ちにして削除を求めてきたのです。ですから、裁判所の削除指示は、意図的な選挙干渉であり、司法の政治的中立性を放棄した意味において極めて違法かつ矛盾した行為であることが明らかなのです。


特に、この訴訟は、露骨な報道統制によつて、この提訴報道が全く為されてゐないことから、訴訟の当事者や支援者らが、訴訟だけではなく、社会運動や政治運動などと連動して取り組むこととなり、この訴訟は、その中心に位置づけられるもので、提訴した代理人弁護士の立候補は密接不可分な関係にあると説明しました。


そして、この文書は、すでにネット上で公開されてゐるので、もし、これを削除して陳述すれば、裁判所が検閲したことや、我々がそれに屈したことの不名誉が明らかになつてしまふが、それでもよいのか、と諭しました。


これについても、裁判所は反論しませんでした。裁判では、当事者がその訴訟とは関係のない余事記載のある準備書面を提出しても、裁判所は、裁判に関係がないとしてその削除を求めることはないのです。その内容が公序良俗に反するものであるとか、その記載自体が脅迫や名誉毀損などの犯罪を構成することなど、自づから制約される場合は削除を求められても当然ですが、それ以外のことについては当事者主義、弁論主義として、当事者の判断に委ねられてゐるのです。


そして、このやうな意見陳述書は、口頭弁論調書には添付されるものの、裁判で認否・反論が必要となる主張書面としては取り扱はれず、これを改めて証拠として提出しない限りは、証拠としても扱はれないものです。


そして、この意見陳述書は、裁判所の要請によつて事前に文書を送付してゐるもので、その一部を削除せよといふのは、占領憲法第21条第2項前段が禁止する検閲に当たり、裁判所が憲法違反の検閲をすることは到底許されるものではない、と強く抗議しました。


すると、裁判所は、それでは、もう一度合議体で再度協議して連絡するといふことでした。そして、再び連絡があり、裁判所の方針としては、どうしても削除してほしいので、削除しないままで陳述するのであれば、裁判所の訴訟指揮権を行使して退廷命令を出すことになりうると言ひました。


そもそも、訴訟指揮権といふものは、こんな場面で行使される性質のものではありません。また、裁判所法第71条で、法廷の秩序維持のための措置として、退廷を命ずることはできますが、仮に、立候補声明が余事記載であつたとしても、それは数秒間の時間で朗読し終はるもので、それによつて法廷の秩序を混乱させ裁判所の職務の執行を妨げたとして、退廷を命ずる事由に該当するものでせうか。


裁判所の要求は、明らかに検閲による削除命令です。法廷の秩序維持のためになされる退廷命令を、検閲を正当化して強行することに利用するのは、権限の濫用であり、違憲かつ違法な行為です。


しかし、これほどまでに裁判所が、検閲に固執する理由はどこにあるのか不明ですが、本気でそのやうな強硬措置を執らうとしてゐると判断されたことから、私は木原弁護士と対策を協議することにしました。


そして、その結果、裁判所がこのやうな行為を強行することは、刑法第193条の公務員職権濫用罪(公務員がその職権を濫用して、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害したときは、二年以下の懲役又は禁錮に処する。)に該当し、もし、身体を拘束して退廷させた場合は、刑法第194条の特別公務員職権濫用罪(裁判、検察若しくは警察の職務を行う者又はこれらの職務を補助する者がその職権を濫用して、人を逮捕し、又は監禁したときは、六月以上十年以下の懲役又は禁錮に処する。)に該当する犯罪行為であるので、これに任意に従つて自発的に退廷することは、違憲かつ違法行為を自ら容認することになるので応じられないとの結論に達しました。


そして、この裁判所の行為の理不尽さを、支援のために傍聴してくれる人に知らせて目撃証人になつてもらふためにも、違憲・違法な退廷命令に対して任意に応ずることを避け、強制力が行使される現実を見てもらふ方針に決めました。


私としては、私自身が矢面に立つべきであり、木原弁護士1人だけを矢面に立たせたくないとの思ひがありましたが、これ以外に選択肢はありませんでした。


そして、予定通り、木原弁護士は、意見陳述において、その削除命令に応ぜずに堂々と陳述しようとしたら、裁判長が怒号で退廷命令を発令し、強制的に木原弁護士の身体を拘束させて退廷させました。


これがわが国の司法の現状なのです。裁判所は行政機関の下部組織になつてしまひました。わが国には表現の自由があるとか、平和だと思つてゐる脳天気な人には到底理解しがたい現実があるのです。


我々としては、こんな裁判官全員に対して忌避申立をすることができますが、それを行ふと忌避に関する決定が確定するまで、ワクチン訴訟の審理が止まつてしまふので、そのことは国や裁判所の思ふ壺になります。

そもそも、忌避申立といふのは、訴訟指揮に関しての不服は忌避事由にならないといふ、裁判所の我田引水、手前味噌の判例があるために、忌避が認められることが殆どないのが実状です。


しかし、訴訟遅延を避けるために忌避はせずに、こんな無法を放置することはできないので、特別公務員職権濫用罪で刑事告訴し、裁判官弾劾法に基づく訴追請求を行ふことにしました。


ところで、12日の法廷では、事前に国が提出してきた答弁書では、訴状やその後の準備書面で主張した具体的な主張事実について全く認否してゐません。


そして、驚くべきこととして、被告国の指定代理人は、全員で32名です。

その内訳は、東京法務局訟務部の5名、厚生労働省健康局健康課予防接種室の9名、厚生労働省健康局がん・疾病対策課の1名、厚生労働省健康局結核感染症課の7名、厚生労働省健康局結核感染症課エイズ対策推進室の1名、厚生労働省健康局難病対策課の1名、厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課の5名、厚生労働省老健局総務課の1名、厚生労働省政策統括官付情報化担当参事官室の1名、厚生労働省政策統括官付政策統括室の1名の計32名の名前が書かれてゐます。


これほど多くの指定代理人を抱へた訴訟は希なものです。国は、それほどまで事の重大さを認識してゐるといふことなのです。


しかも、提訴の4日前の7月26日には、東京の司法記者クラブ経由で、被告国は今回の訴状の全文を入手してゐるのに、第一回弁論期日の10月12日でも、未だに訴状の認否をしないのです。

そして、その認否をさらに2か月以上後の12月17日までに提出するとして、時間稼ぎをして引き延ばしてきました。


裁判所としても、国民の生命等に関はる重大事件であるのに、もつと早く提出させることを強く要請すべきなのに、それをせずに、退廷命令に固執したのです。訴訟指揮権といふのは、本来は迅速な裁判を行ふべき場面で行使するべきものなのです。


そして、次回期日は、令和4年1月13日午前11時30分となりました。少しでも遅くなれば、いろんな言ひ訳ができるし、状況の変化があると考へてゐるのでせう。


いづれにしても、12日の裁判は、これらの手続を終へた後、最後に木原弁護士の意見陳述をする段階になつてから、退廷命令の事件が起こつたのです。


呼びかけに応じてくれた多くの支援者らが東京地裁に集まり、我々の行動表現であるマスク不着用に賛同した人達が長蛇の列を作りましたが、傍聴席の抽選はされずに先着順で26席の傍聴席を埋め尽くしてくれました。

傍聴希望者は、裁判所の構内でも、703号法廷のある7階でも多くのマスク不着用の人がゐました。鼻出しマスクの人を含めると400人以上は集まつたとの報告を受けてゐます。

裁判所入口での所持品検査でも、マスク不着用のことが原因で、何らトラブルも混乱も起こつてゐません。


ところが、共同通信が配信したニュースでは、「数百人マスクせず混乱、東京地裁 ワクチン訴訟で」として、


「新型コロナウイルスのワクチン特例承認差し止めを巡る訴訟の第1回口頭弁論が12日、東京地裁で開かれ、庁舎内に関係者とみられる数百人がマスクを着用せずに集団で入った。職員らは感染予防のため対応に追われ、混乱した。午後1時半の開廷に合わせ、裁判所の建物に入るための手荷物検査には長い行列ができた。1階のロビーや弁論が開かれた法廷のある7階のフロアも、マスクをしない人であふれかえった。」


とし、あたかもマスク不着用で混乱したといふフェイクを垂れ流し、ワクチン訴訟の内容のことや、法廷での検閲と退廷命令などの事件については全く報道されないのです。


わが国の報道統制と捏造報道の凄まじさは、いまや韓国以上です。


ところで、今回は面白いことがありました。露骨な検閲をして違法な退廷命令まで出した裁判長は、マスク着用の義務がなく任意であると法廷で発言しました。我々は、この訴訟において、令和3年8月30日付け準備書面で、「マスクの着用義務がないことを確認する」旨の請求を追加してゐましたし、国は、答弁書でその法的義務があるかのやうに争つてゐます。にもかかはらず、裁判長は、マスク着用義務がないと明確に判断したのですから、裁判所は判決を出す前に我々の請求を先取りして認容した訳です。国としては、こんな予断を持つた裁判官に対して当然に忌避申立すべきなのに、それをしませんでした。これは希代のお笑ひ裁判として今後評価されることになります。


次回期日は、令和4年1月13日午前11時30分です。私は次には必ず出廷します。裁判所や国の思ふやうにはさせません。この日は、さらに多くのマスク不着用の人が東京地裁に集結して、反ワクチンを訴へる行動表現の日としませう。


南出喜久治(令和3年10月15日記す)


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