國體護持總論
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著書紹介

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反グローバル化運動

このやうに、生産至上主義による國際自由貿易、國際分業體制が地球と世界及び各國の不安定化要因の元凶であることが明白となつたが、それでも現在は、「國際化」とか「世界化」とか「國際貢獻」とかの呪文にも似た空虚で欺瞞に滿ちた掛け聲が、あたかもそれが國際正義の實現を保障するかのやうに唱へられ、また、「釜中之魚」の如く、世界と地球に危機が迫り來るのも知らずにそれに浮かれて踊らされた多くの人々が自滅の方向へと向かつてゐる。これは、賭博經濟によつて不正に巨利をむさぼり、世界を階層化、窮乏化させて世界支配を目論む覇權主義、全體主義の謀略であり、地球と世界の壞滅へと導く惡魔の囁きである。

誰のための「國際化」なのか。何のための「世界化」なのか。そして、「國際貢獻」の中身は何なのか。これらの掛け聲が意味するところは、自由貿易、即ち、經濟交流に力點があり、本音は巨利の追求にあつて、文化と技術の交流ではない。特に、相手國の基幹物資の自給率を高めるための各種の交流ではなく、交換經濟の果ての國際分業による自給率の低下のための交流である。このやうな交流は、「紛爭の國際化」であり「世界の不安定化」であり、そして、「國際紛爭貢獻」に過ぎない。決して、各獨立國家の安定と世界人類の福祉のための貢獻ではないのである。

これと同じ問題意識を持つた國際的な運動の一つが反グローバル化運動である。人と物と金(産業資本、銀行資本、投機資金など)が國境を越えて行き交ふ米國主導のグローバル化(globalization)が、貧富の格差を擴大させ、環境と文化の多樣性を破壞するとして、これに反對する組織連帶的な運動である。平成十三年七月のイタリアで開催された主要國首腦會議(ジェノバ・サミット)に、世界各地から集まつた數十萬人の反グローバル化を唱へるデモ隊が終結し、そのうちの先鋭的な團體が警官隊と衝突して、サミット反對運動では初めて死者まで出る事態となり、その後のサミット開催においては、恆常的に異例の警備措置がとられるほどの影響を及ぼしてゐる。反グローバル化運動の矛先は、サミット以外にも、世界貿易機關(WTO)、世界復興開發銀行(IBRD)、國際通貨基金(IMF)などの國際經濟機關に對しても向けられてをり、個別的、具體的な規制の要求や提案を行ふ團體も登場してゐる。

今もなほ繼續してゐるこのやうな運動がもたらしたものは、持續可能な成長と貧富の格差の是正といふことを世界的な問題として提起した意義はあるものの、平成十三年九月の「九・一一」事件以降は、この運動がテロ活動の温床となるとのすり替へがなされたりして、今後の運動の推進について困難な状況も生まれてゐる。

しかし、サミットにおいて、環境保護やフェアトレード(公正貿易)などを謳ひ上げたとしても、グローバル化を是とした上で、その表裏の關係にある光と陰とに分けて、陰だけを克服できるといふサミット思想の愚かさに加へ、金融資本主義といふ博打打ちだけに光の當たる制度には未來がないことから、この反グローバリズム運動が終息することはないだらう。

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