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日本國憲法(占領憲法)

昭和二十一年十一月三日公布、同二十二年五月三日施行

朕は、日本國民の總意に基いて、新日本建設の礎が、定まるに至つたことを、深くよろこび、樞密顧問の諮詢及び帝國憲法第七十三條による帝國議會の議決を經た帝國憲法の改正を裁可し、ここにこれを公布せしめる。

 御名御璽

  昭和二十一年十一月三日

日 本 國 憲 法

日本國民は、正當に選擧された國會における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸國民との協和による成果と、わが國全土にわたつて自由のもたらす惠澤を確保し、政府の行爲によつて再び戰爭の慘禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主權が國民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも國政は、國民の嚴肅な信託によるものであつて、その權威は國民に由來し、その權力は國民の代表者がこれを行使し、その福利は國民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔敕を排除する。

日本國民は、恆久の平和を念願し、人間相互の關係を支配する崇高な理想を深く自覺するのであつて、平和を愛する諸國民の公正と信義に信賴して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、專制と隷從、壓迫と偏狹を地上から永遠に除去しようと努めてゐる國際社會において、名譽ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の國民が、ひとしく恐怖と缺乏から免かれ、平和のうちに生存する權利を有することを確認する。

われらは、いづれの國家も、自國のことのみに專念して他國を無視してはならないのであつて、政治道德の法則は、普遍的なものであり、この法則に從ふことは、自國の主權を維持し、他國と對等關係に立たうとする各國の責務であると信ずる。

日本國民は、國家の名譽にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。

第一章  天皇

第一條 天皇は、日本國の象徴であり日本國民統合の象徴であつて、この地位は、主權の存する日本國民の總意に基く。

第二條 皇位は、世襲のものであつて、國會の議決した皇室典範の定めるところにより、これを繼承する。

第三條 天皇の國事に關するすべての行爲には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ。

第四條 天皇は、この憲法の定める國事に關する行爲のみを行ひ、國政に關する權能を有しない。

天皇は、法律の定めるところにより、その國事に關する行爲を委任することができる。

第五條 皇室典範の定めるところにより攝政を置くときは、攝政は、天皇の名でその國事に關する行爲を行ふ。この場合には、前條第一項の規定を準用する。

第六條 天皇は、國會の指名に基いて、内閣總理大臣を任命する。

天皇は、内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。

第七條 天皇は、内閣の助言と承認により、國民のために、左の國事に關する行爲を行ふ。

一 憲法改正、法律、政令及び條約を公布すること。

二 國會を召集すること。

三 衆議院を解散すること。

四 國會議員の總選擧の施行を公示すること。

五 國務大臣及び法律の定めるその他の官史の任免竝びに全權委任状及び大使及び公使の信任状を認證すること。

六 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復權を認證すること。

七 榮典を授與すること。

八 批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認證すること。

九 外國の大使及び公使を接受すること。

十 儀式を行ふこと。

第八條 皇室に財産を讓り渡し、又は皇室が、財産を讓り受け、若しくは賜與することは、國會の議決に基かなければならない。

第二章  戰爭の放棄

第九條 日本國民は、正義と秩序を基調とする國際平和を誠實に希求し、國權の發動たる戰爭と、武力による威嚇又は武力の行使は、國際紛爭を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戰力は、これを保持しない。國の交戰權は、これを認めない。

第三章  國民の權利及び義務

第十條 日本國民たる要件は、法律でこれを定める。

第十一條 國民は、すべての基本的人權の享有を妨げられない。この憲法が國民に保障する基本的人權は、侵すことのできない永久の權利として、現在及び將來の國民に與へられる。

第十二條 この憲法が國民に保障する自由及び權利は、國民の不斷の努力によつて、これを保持しなければならない。又、國民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

第十三條 すべて國民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に對する國民の權利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の國政の上で、最大の尊重を必要とする。

第十四條 すべて國民は、法の下に平等であつて、人種、信條、性別、社會的身分又は門地により、政治的、經濟的又は社會的關係において、差別されない。

華族その他の貴族の制度は、これを認めない。

榮譽、勳章その他の榮典の授與は、いかなる特權も伴はない。榮典の授與は、現にこれを有し、又は將來これを受ける者の一代に限り、その效力を有する。

第十五條 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、國民固有の權利である。

すべて公務員は、全體の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。

公務員の選擧については、成年者による普通選擧を保障する。

すべて選擧における投票の祕密は、これを侵してはならない。選擧人は、その選擇に關し公的にも私的にも責任を問はれない。

第十六條 何人も、損害の救濟、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廢止又は改正その他の事項に關し、平穩に請願する權利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。

第十七條 何人も、公務員の不法行爲により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、國又は公共團體に、その賠償を求めることができる。

第十八條 何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る處罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。

第十九條 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。

第二十條 信教の自由は、何人に對してもこれを保障する。いかなる宗教團體も、國から特權を受け、又は政治上の權力を行使してはならない。

何人も、宗教上の行爲、祝典、儀式又は行事に參加することを強制されない。

國及びその機關は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。

第二十一條 集會、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

檢閲は、これをしてはならない。通信の祕密は、これを侵してはならない。

第二十二條 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移轉及び職業選擇の自由を有する。

何人も、外國に移住し、又は國籍を離脱する自由を侵されない。

第二十三條 學問の自由は、これを保障する。

第二十四條 婚姻は、兩性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の權利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。

配偶者の選擇、財産權、相續、住居の選定、離婚竝びに婚姻及び家族に關するその他の事項に關しては、法律は、個人の尊嚴と兩性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。

第二十五條 すべて國民は、健康で文化的な最低限度の生活を營む權利を有する。

國は、すべての生活部面について、社會福祉、社會保障及び公衆衞生の向上及び增進に努めなければならない。

第二十六條 すべて國民は、法律の定めるところにより、その能力に應じて、ひとしく教育を受ける權利を有する。

すべて國民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。

第二十七條 すべて國民は、勤勞の權利を有し、義務を負ふ。

賃金、就業時間、休息その他の勤勞條件に關する基準は、法律でこれを定める。

兒童は、これを酷使してはならない。

第二十八條 勤勞者の團結する權利及び團體交渉その他の團體行動をする權利は、これを保障する。

第二十九條 財産權は、これを侵してはならない。

財産權の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。

私有財産は、正當な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。

第三十條 國民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。

第三十一條 何人も、法律の定める手續によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

第三十二條 何人も、裁判所において裁判を受ける權利を奪はれない。

第三十三條 何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、權限を有する司法官憲が發し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。

第三十四條 何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに辯護人に依賴する權利を與へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正當な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその辯護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。

第三十五條 何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押收を受けることのない權利は、第三十三條の場合を除いては、正當な理由に基いて發せられ、且つ捜索する場所及び押收する物を明示する令状がなければ、侵されない。

捜索又は押收は、權限を有する司法官憲が發する各別の令状により、これを行ふ。

第三十六條 公務員による拷問及び殘虐な刑罰は、絶對にこれを禁ずる。

第三十七條 すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける權利を有する。

刑事被告人は、すべての證人に對して審問する機會を充分に與へられ、又、公費で自己のために強制的手續により證人を求める權利を有する。

刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する辯護人を依賴することができる。被告人が自らこれを依賴することができないときは、國でこれを附する。

第三十八條 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。

強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不當に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを證據とすることができない。

何人も、自己に不利益な唯一の證據が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。

第三十九條 何人も、實行の時に適法であつた行爲又は既に無罪とされた行爲については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。

第四十條 何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、國にその補償を求めることができる。

第四章  國會

第四十一條 國會は、國權の最高機關であつて、國の唯一の立法機關である。

第四十二條 國會は、衆議院及び參議院の兩議院でこれを構成する。

第四十三條 兩議院は、全國民を代表する選擧された議員でこれを組織する。

兩議院の議員の定數は、法律でこれを定める。

第四十四條 兩議院の議員及びその選擧人の資格は、法律でこれを定める。但し、人種、信條、性別、社會的身分、門地、教育、財産又は收入によつて差別してはならない。

第四十五條 衆議院議員の任期は、四年とする。但し、衆議院解散の場合には、その期間滿了前に終了する。

第四十六條 參議院議員の任期は、六年とし、三年ごとに議員の半數を改選する。

第四十七條 選擧區、投票の方法その他兩議院の議員の選擧に關する事項は、法律でこれを定める。

第四十八條 何人も、同時に兩議院の議員たることはできない。

第四十九條 兩議院の議員は、法律の定めるところにより、國庫から相當額の歳費を受ける。

第五十條 兩議院の議員は、法律の定める場合を除いては、國會の會期中逮捕されず、會期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、會期中これを釋放しなければならない。

第五十一條 兩議院の議員は、議院で行つた演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない。

第五十二條 國會の常會は、毎年一回これを召集する。

第五十三條 内閣は、國會の臨時會の召集を決定することができる。いづれかの議院の總議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。

第五十四條 衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に衆議院議員の總選擧を行ひ、その選擧の日から三十日以内に、國會を召集しなければならない。

衆議院が解散されたときは、參議院は、同時に閉會となる。但し、内閣は、國に緊急の必要があるときは、參議院の緊急集會を求めることができる。

前項但書の緊急集會において採られた措置は、臨時のものであつて、次の國會開會の後十日以内に、衆議院の同意がない場合には、その效力を失ふ。

第五十五條 兩議院は各々その議員の資格に關する爭訟を裁判する。但し、議員の議席を失はせるには、出席議員の三分の二以上の多數による議決を必要とする。

第五十六條 兩議員は、各々その總議員の三分の一以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。

兩議院の議事は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、出席議員の過半數でこれを決し、可否同數のときは、議長の決するところによる。

第五十七條 兩議院の會議は、公開とする。但し、出席議員の三分の二以上の多數で議決したときは、祕密會を開くことができる。

兩議院は、各々その會議の記錄を保存し、祕密會の記錄の中で特に祕密を要すると認められるもの以外は、これを公表し、且つ一般に頒布しなければならない。

出席議員の五分の一以上の要求があれば、各議員の表決は、これを會議錄に記載しなければならない。

第五十八條 兩議院は、各々その議長その他の役員を選任する。

兩議院は、各々その會議その他の手續及び内部の規律に關する規則を定め、又、院内の秩序をみだした議員を懲罰することができる。但し、議員を除名するには、出席議員の三分の二以上の多數による議決を必要とする。

第五十九條 法律案は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、兩議院で可決したとき法律となる。

衆議院で可決し、參議院でこれと異なつた議決をした法律案は、衆議院で出席議員の三分の二以上の多數で再び可決したときは、法律となる。

前項の規定は、法律の定めるところにより、衆議院が、兩議院の協議會を開くことを求めることを妨げない。

參議院が、衆議院の可決した法律案を受け取つた後、國會休會中の期間を除いて六十日以内に、議決しないときは、衆議院は、參議院がその法律案を否決したものとみなすことができる。

第六十條 豫算は、さきに衆議院に提出しなければならない。

豫算について、參議院で衆議院と異なつた議決をした場合に、法律の定めるところにより、兩議院の協議會を開いても意見が一致しないとき、又は參議院が、衆議院の可決した豫算を受け取つた後、國會休會中の期間を除いて三十日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を國會の議決とする。

第六十一條 條約の締結に必要な國會の承認については、前條第二項の規定を準用する。

第六十二條 兩議院は、各々國政に關する調査を行ひ、これに關して、證人の出頭及び證言竝びに記錄の提出を要求することができる。

第六十三條 内閣總理大臣その他の國務大臣は、兩議院の一に議席を有すると有しないとにかかはらず、何時でも議案について發言するため議院に出席することができる。又、答辯又は説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない。

第六十四條 國會は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、兩議院の議員で組織する彈劾裁判所を設ける。

彈劾に關する事項は、法律でこれを定める。

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