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連載:千座の置き戸(ちくらのおきど)【続・祭祀の道】編

第五十四回 橋下徹と憲法無効論

すねものが ほらがたうげを きめこむを ものめづらしと はやすくつひと
(拗ね者が洞ケ峠を決め込むを物珍しと囃す沓人)


前回(第53回)において、私は、次のやうに述べました。


私は、これを援護するため、同志の土屋敬之都議の協力を得て、同年6月8日に都議会の会議室で、中松氏をメインスピーカーとして、他に西田昌司参議院議員、西村真悟衆議院議員、三宅博衆議院議員、土屋敬之都議、野田数都議その他の地方議員の参加を得て、帝国憲法復元改正の集会を開催した上で、都議会に占領憲法と占領典範の無効確認決議の請願のための5027名の署名者を集めて、その日に土屋都議、野田都議を紹介議員として提出しました。

さらに、これに呼応して、平成23年から平成24年にかけて、参議院、衆議院、そして石垣市議会に対して同様の請願を行つたのです。


平成24年6月13日には、都議会で土屋都議が、占領憲法が無効であることに関する石原都知事の見解を一般質問で求め、石原都知事がそのとほりであるとの答弁を引き出してもらつたのです。


そして、その後の都議会請願の本会議での採択では、さらに2名が加はつて4人の都議会議員が賛成しました。


これに驚いたのが共産党でした。当時は8名しか居なかつた共産党都議団からすると、その半数に当たる4名が占領憲法と占領典範の無効確認決議に賛成したことから、機関紙の赤旗で大々的に批判しことにより、逆にこれが全国ニュースとなつたのです。


さうです。共産党は、平成24年10月12日付け同月13日付けの『しんぶん赤旗』で、

 「帝国憲法は現存、理解」→「ありえない」
 批判集中を受け 橋下代表主張一変

 「東京維新」の帝国憲法復活賛成、「赤旗」報道に反響、維新動揺
との記事を掲載したのです。


 これらを総合して抜粋すると、

 東京都議会新会派「東京維新の会」(野田数代表)が都議会で、原稿の日本国憲法を無効とし、戦前の「大日本帝国憲法」の復活を求める時代錯誤の請願に賛成したことが波紋を拡げています。

 東京維新の会が橋下徹大阪市長の「日本維新の会」と連携しているため、「日本維新の会」の姿を強烈に印象づけたのでした。同会は民主・自民を離党した都議3人が9月10日に結成。定例都議会での”初仕事”が、対日本帝国憲法の復活を求めたことでした。

 橋下氏は、前日の9日、記者団に対し、「各地域のグループが自らの責任で活動することに、党本部の方であれやこれやとは言わない」と追認。請願に示された”現行憲法は無効で大日本帝国憲法が現存する”という特異な考え方についても「そういう理屈も成り立つことは理解している」と語っていました。

 ところが、10日の市役所での囲み取材では「大日本帝国憲法復活はどう考えてもありえない」と強調。「日本維新の会」が「東京維新の会」の側から「始末書みたいなもの」を受け取ったことを明らかにし、「始末書を出すぐらいなら初めからやらなければいい」と突き放しました。

(橋下氏は)「大日本帝国憲法の復活なんて一部の特定のマニアの中だけでやっておく話だ」と語りました。請願賛成に「信じがたい」との批判が集中していることを受けて当初の論調を一変させた格好です。

 一方、石原慎太郎都知事の「現行憲法破棄」論については、「新しい憲法をつくつていくという話だったら、理屈としてはあり得る」などと発言。橋下氏は「日本維新の会」としては現行憲法に定められた「改正手続き」によって改憲を目指すと繰り返しています。

 問題の請願は、南出喜久治國體護持塾塾長(京都市)らが6月に提出したもの。東京維新の会の野田数(当時は自民を離党し無所属)、民主党を離党した土屋敬之(無所属)の2議員が紹介議員で、天皇を元首として無制限に権力を与え、国民を「臣民」として、自由と権利を抑圧した大日本帝国憲法を美化しています。

といふ記事でした。


ここから見えてくるのは、橋下氏の御都合主義です。しかも、「占領憲法が無効なら帝国憲法も無効」とも発言してゐましたので、論理破綻が明らかです。

「”現行憲法は無効で大日本帝国憲法が現存する”という特異な考え方についても「そういう理屈も成り立つことは理解している」」といふのであれば、「大日本帝国憲法復活はどう考えてもありえない 」のではなく、そういふ理屈も成り立つことも理解できるはずだからです。


いづれにせよ、御都合主義により、たつた1日で正反対の見解を示したのですが、実のところ、ここに至るまでに、水面下でいろいろとありました。


石原氏は、私に、東京(石原都知事)、名古屋(河村たかし市長)、大阪(橋下徹市長)の地方連帯によつて中央官庁の撃破を考へてゐました。占領憲法によつて固められた中央官僚制を大転換させる論理としては、単なる改正論では全く無力であり、東京、名古屋、大阪の最大公約数の論理として真正護憲論を旗印にして、地方から中央を撃破するといふ構想のため、名古屋と大阪に真正護憲論を植ゑ付けたいとして、私にその役目を担はせたのです。


名古屋の河村市長とは、民社党時代からの縁もあり、直ぐに面談して憲法論の理解を深めてもらひました。河村氏は、以前、「交戦権」がないことによつて自衛隊が自衛戦争をできないといふ致命的な実情を誰も指摘して議論しないとの核心的な発言したことがあります。河村氏は、占領憲法の本質に真摯に向き合へる希有な政治家の一人です。


次は、橋下市長ですが、石原氏の秘書(H氏)から橋下氏の秘書(O氏)に積極的に連絡してもらつて、私と橋下氏との面談日程を調整してもらつたのですが、うまく行かず、その後私が直接に橋下氏の秘書と日程調整をしても、最後まで実現できなかつたのです。今から考へれば、敬遠されたのだと思ひます。


そのために、石原氏は、憲法観の大きく異なる橋下氏を抱きかかへれば説得できるとし、さらに、そのことによつて、数の力で石原首班内閣の実現に近づけると考へたのですが、それも頓挫しました。


いづれにせよ、橋下氏の政治手法は、論理や道義よりも日和見主義、ポピュリズムに「徹」したもので、「際物狙ひ」による大衆のカンフル的覚醒を心掛けるといふ特異なものです。そのためには、朝令暮改の御都合主義は当然のことだと思ひます。

「維新」ではなく、その本質的な目的は、国民主権による「革命の完成」なのです。

安倍首相としては、このやうな単純で手の内が読める勢力を自民党の党勢拡大のための荒々しい「砕氷船」として利用する大きな価値があると考へてゐるのでせう。


橋下氏が政界を引退したといふのであれば、今からでも遅くありませんので、私は、憲法の効力論争を橋下氏としてみたいと思つてゐます。前のやうに日程調整ができないと言つて逃げる必要はないはずと思ひますが、どうでせうか。

南出喜久治(平成28年7月1日記す)


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