自立再生政策提言

トップページ > 自立再生論02目次 > H30.5.01 第九十八回  憲法普及会

各種論文

前の論文へ | 目 次 | 次の論文へ

連載:千座の置き戸(ちくらのおきど)【続・祭祀の道】編

第九十八回  憲法普及会

とつくにの ちぎりをのりと みまがひて まつりごつやみ はらひしたまへ
(外国の契り(条約)を法(憲法)と見紛ひて政治する闇祓ひし給へ)


あと2日で、また国辱の日がやつてくる。


國體護持総論の第三章で、占領憲法が憲法として無効である理由の一つとして、その当時の政治的意志形成に瑕疵があつたことについて述べてゐるが、その中で、「憲法普及会」といふ政府機関による全国的な洗脳運動の事実があつたことを指摘した。

実は、これこそが臣民に対する最大の洗脳工作であつて、全国組織的な洗脳運動を推進する母体として、昭和21年12月1日、帝国議会は、「憲法普及会」を組織した。官製の洗脳運動の始まりである。GHQ傀儡政府による似非憲法を普及する洗脳運動である。


この「似非」憲法普及会は衆貴両議員を評議員とし、評議員と院外者(学者、ジャーナリストなど)の中から理事を選任し、会長は芦田均(衆議院議員)、事務局長は永井浩(文部官僚)が就任。院外者の理事には、河村又介(九大・憲法)、末川博(立命館・民法)、田中二郎(東大・行政法)、宮澤俊義(東大・憲法)、横田喜三郎(東大・国際法)、鈴木安蔵(憲法)などの学者の他、ジャーナリスト、評論家では、岩淵辰雄、小汀利得、長谷部忠などが就任した。この中央組織の下に各都道府県に支部が翌昭和22年1月から3月までにつくられ、京都支部以外の支部長は各都道府県知事が就任し、その支部事務所は各都道府県庁内に設置された。まさに、占領憲法による洗脳運動の「大政翼賛会」であり、その活動はGHQの指令に基づいたものであつた。

そして、昭和22年1月17日、憲法普及会の常任理事会が首相官邸で開催され、GHQ民政局員のハッシーとエラマンが出席した。全国を10区域(東京、関東、北陸、関西、東海、中国、四国、九州、東北、北海道)に分け、各地区で4日ないし5日間の日程で講師による中堅公務員の研修を実施することを決定し、これに基づき、同年2月15日、憲法普及会が東大法学部31番教室で664名の公務員(各省庁及び警察庁から約50名づつ)を集めて憲法研修会を実施(同月8日までの4日間)した。

その演題は、「開講の辞」(会長・芦田均)、「新憲法と日本の政治」(会長・芦田均)、「近代政治思想」(東大講師・堀眞琴)、「新憲法大観」(副会長・金森德次郎)、「戦争放棄論」(東大教授・横田喜三郎)、「基本的人権」(理事・鈴木安蔵)、「国会・内閣」(東大教授・宮澤俊義)、「司法・地方自治」(東大教授・田中二郎)、「家族制度・婦人」(東大教授・我妻榮)、「新憲法と社会主義」(代議士・森戸辰男)、「閉講の辞」(事務局長・永井浩)といふものであつた。


憲法普及会編『新憲法講話』(昭和22年7月発行)は、非売品として五万部印刷して憲法研修会にテキストとして使用された。横田喜三郎は、その中で、自衛戦争を否定し自自衛権は制約されるとして次のやうに主張してゐた。


「自衛の戦争といえども、今後は戦争をいっさい行わない」「外国から急に攻められるような場合には、一応自衛権を認めるけれども、国際連合がその自衛権が正当か否かということを判断して、その後は国際連合が引受けることとし、国際連合が活動できない暫定的の間だけ、自衛権を認めることになっております。」 といふ極めて間の抜けた主張であつた。


横田は、この当時我が国が非独立国であり、国際連合に加盟してゐないので、国連憲章第51条の個別的又は集団的自衛権の適用はなく、しかも、敵国条項(第53条、第107条)があるため、自衛権そのものが否定されてゐることを知らなかつた。無能学者の横田は、堂々と妄言を吐いたのである。

ちなみに、横田は、昭和26年9月8日のサンフランシスコ講和条約と旧安保条約調印後に、一転して、自衛権を一般的に肯定し、武力なき自衛権の行使として米軍駐留と基地提供を認めるに至り(『自衛権』(有斐閣)昭和26年)、その変節の功績によつて最高裁判所長官へと上りつめた。

ともあれ、占領憲法が「ただしい、すばらしい」といふ洗脳書は、この『新憲法講話』以外にも、内閣法制局閲『新憲法の解説』(昭和21年11月発行)がある。これは、全文94頁のもので、20万部発行された。


さらに、一般国民を対象とした憲法普及会主催の講演会を全国各地で開催した。一例を挙げれば、群馬県では382回、6万人余の受講者を動員した。また、石川県では108回、1万2000人、長野県では56回、1万4000人を動員したのである。

そして、憲法普及会編『新しい憲法 明るい生活』(昭和22年5月3日発行)に至つては、全文30頁のもので、それを2000万部発行したのである。この部数は、当時の全世帯数に相当する部数である。これを各戸配布したのである。その中で、芦田均は、「新しい日本のために」と題する文を掲載し、「新憲法は、日本人の進むべき大道をさし示したものであって、われわれの日常生活の指針であり、日本國民の理想と抱負とをおりこんだ立派な法典である。」と、歯が浮くやうな軽薄な言葉で洗脳に加担した。


この『新しい憲法 明るい生活』は、憲法普及会と文部省教科書課が第一稿を作成し、東大の横田喜三郎と田中二郎が推敲して、芦田均と金森德次郎が審査した後、GHQ民政局員ハッシーが監修したもので、明確な洗脳文書である。これを投票用紙の配布と同様の方法で全戸に無料配布したのである。昨今の教科書の偏向どころの騒ぎではない。さらに、洗脳の仕上げとして、全国から懸賞論文の募集をしたのである。審査委員は、芦田均、金森德次郎、宮澤俊義、横田喜三郎である。また、制作指導や資金援助をした映画も作られた。『新憲法の成立』、『情炎』、『壮士劇場』、『戦争と平和』などである。それだけでない。児童向け短編映画、幻灯、紙芝居、カルタなど、臣民のすべての階層を洗脳し続けた。

音楽では『われらの日本(新憲法施行記念国民歌)』、『憲法音頭』まで作られて、すべての行事に演奏された。新憲法施行記念式典では、『君が代』ではなく、「平和のひかり 天に満ち 正義のちから 地にわくや われら自由の 民として 新たなる日を 望みつつ 世界の前に 今ぞ起つ」といふ歌詞の『われらの日本(新憲法施行記念国民歌)』が演奏されたのである。まさに、国民洗脳運動が官民、GHQの総動員体制で繰り広げられた。


ところで、全戸配付された『新しい憲法 明るい生活』は、ネット上でも現物を確認できるので、来る5月3日の国辱の日を前にして、占領憲法がこの冊子でどのやうに説明されてゐたかを、是非とも実物大のものを見て洗脳の切れ端を感じ取つてほしい。

第9条に関しては、この中で「私たちは陸海空軍などの軍備をふりすてて、全くはだか身となつて平和を守ることを世界に向つて約束したのである。」とある。


「全くはだか身となって平和を守る。」


これは、非武装無抵抗を強制することである。銃口の前に、はだか身をさらして一切抵抗するな、そして、もし、殺されたくなかつたら、言はれるがままに奴隷となつて「平和」を守れ、と強制する。決して「国家」を守れとは言はないのである。

こんな似非憲法普及会に何世代も洗脳され続け、いつまでこんなものを憲法だと思つてゐるのか!

似非を改正するだと!? 開いた口が塞がらない。

似非は「改正」できず「壊逝」あるのみ。

南出喜久治(平成30年5月1日記す)


前の論文へ | 目 次 | 次の論文へ